社会福祉学部で身につける8つの教養の力

8つの教養の力とは

社会福祉学部では卒業時に最低限身につけておきたい内容をまとめた「学士スタンダード」にて、教養の力を8つ示しています。

1.自学力
Arrow icon

自ら学んでいくことができる力です。 生涯にわたって活躍する人は、自ら学び自分のキャリアを築いていっています。 自学力を身につけるには、1つは「こうなりたい」という将来像を見つけることです。見つかればその目標に向けて、必要な勉強を自らするようになります。もう1つは、自分が潜在的に宿している興味関心に目覚めることです。興味関心があることは自ら知ろうとします。

2.習慣化する力
Arrow icon

善さや正しさという価値の内容は学ぶことができます。しかし、そうした倫理(善い心、善い行い)や正義(正しい行為)は、行為を日々反復すること(習慣化っすること)で身につくものです。不正をせず、「こうしよう」と自分で決めた善い意志を継続して実行できる力を育むことが大切です。

3.大切なことを見極められる力
Arrow icon

大切なことを見極められる力こそ、教養の力の中核と言えます。教養のある人は、何が大切であるかを理解し行動します。この力を身につけるには、尊厳、愛、正義、権利など、分かっているようで分かっていない言葉の意味をしっかり理解することです。大切なことは、単なる知識としてではなく、対話をし、自分が腑に落ちる形で理解を深めていくことができます。

4.折り合いをつけられる力
Arrow icon

①他者と折り合いをつけ物事を進められる力、②意見が異なる人を排除したり攻撃したりしないで人と関わることができる力です。この力から、差別や他者を攻撃しない寛容な心が生まれます。また、この力には「他の人の意見に耳を傾けられる力」が含まれています。

5.国語力
Arrow icon

一般的には、言語を使って、考える、感じる、想像する、そしてそれらを表現する力のことです。このうち考える力は「6.論理力」であり、感じる・想像する力は「8.共感力・想像力」なので、ここでいう国語力は「表現する力」のなかの①文章力、②語彙力のことを意味します。つまり、自分が考えていることや思い感じていることを表現する文章力や語彙をもっていることが、社会福祉学部の教養における国語力です。国語力は他者と協働して物事をする上での基盤になる基礎的な力です。

6.論理力
Arrow icon

①接続詞を適切に用いることができる力、②カテゴリー(意味の塊を示す言葉、項目となるような言葉)を使って物事を整理できる力、③論証することができる力のことです。これらの力を使って、言いたいことを整理したり、根拠を示した形で考えを伝えたりできることが論理力です。

7.対話力
Arrow icon

論理を媒介として、互いに論理に従い話し合いをすることができる力です。これを基盤として対話力には、①人の話を聞き、理に適ったものであれば自分の意見を修正できる力、②他者尊重を基盤にし、論理に従って対話できる力も含みます。権力や多数の意見ではなく、あくまでも理に適ったこと、すなわち、論理に従って、物事(活動)を進めていくことが望ましいです。

8.共感力・想像力
Arrow icon

他者に共感したり、相手の立場を想像したりできる力です。人間は一人ひとりが違うけれど、すべての人が”かけがえのない”大切な存在として「同じ人間なんだ」と思う、この気持ちを強くすることが、共感力・想像力を身につけるうえで大事です。

1

教養の意味

教養とは「他者と生きるために必要な心や立ち居振る舞い(態度や行為)」のことです。 私たちはそれを潜在的可能性として宿しています。その可能性が、教育、善き習慣、さまざまな経験を通して顕在化したものが「教養」です。

2

実践力

支援が必要な人に気づき、その人が抱えているニーズ(支援が必要なこと)を的確に理解し、そのニーズを充足すること、言い換えれば、課題・問題を改善・解決できる力を実践力といいます。また、人と人とが支え合える地域・社会を実現できる力のことです。

3

教養を重視する理由

理由は2つあります。 専門教育は全体の一部を掘り下げます。例えば、医学であれば人間という全体の主に体と精神の部分を、心理学であれば心の部分を掘り下げます。経済学であれば社会全体の経済の部分を、政治学であれば政治の部分を掘り下げます。 専門とは、ときに狭い視野に陥ってしまいます。これに対して、教養は幅広い視野をもつことを可能にするからです。 もう1つは、生涯にわたって活躍するためです。「8つの教養の力」は、生涯にわたって活躍するために必要な力です。

4

教養の力の根底にある「知性ー理性ー感性」

社会福祉学部における教養教育の特長は、教養の力の根底にある「知性ー理性ー感性」をバランスよく身につける点です。つぎの文章を読んでください。

❝10年以上、精神疾患と闘っている。 中学校から不登校になり、引きこもりになった。長年の自傷行為で、左腕全体はズタボロである。病気になるまで、なぜ痛い思いをしてまで自分を傷つけるのかは理解できなかった。 元気だったころは、普通に学校を卒業し、青春を謳歌し、大人になって働く。そんな人生を思い描き、そうなるものと信じていた。  異変のきっかけは両親の不仲だった。特に父からの私への暴言と暴力がひどかった。いまでも頭を触られそうになると、手を振り上げる父の姿と重なってしまう。目を強くつむり、体を硬くして痛みに耐える形をとってしまう。両親はその後離婚し、母は再婚したが、その再婚相手が陰で私のことを「お荷物」と話していたことを知り、失神した。  制服姿で、笑顔で登下校している人、私より若い人が働いているのを見ると、自分だけが取り残され、時間の止まった世界にいるような感覚になる。心が弱かったから、他の人のように頑張れなかったと自分を責める。  今は息をひそめながら、家事手伝いをしているが、このまま無為に朽ちるのでは何のために生まれて来たのか分からない。後悔しても、時間も左腕も元には戻らない。だからこそ、この経験を無駄にせず、同じように苦しむ人を救いたい。精神疾患になりたくてなった人などこの世にはいないことを知ってほしい。そんな思いで勇気を出して筆を執った。 埼玉県桶川市 匿名 家事手伝い 26歳 (毎日新聞 2019年1月25日付 15面)❞

教養の力は「知性ー理性ー感性」といった人間の精神機能によりもたらされます。この声(上記の訴え)に気づき、「この声は、私たちが聴かなければならない大切な願い」であることを理解できる力が知性です。なぜ、こういった状況が生じてしまうのか、その原因を推測する力が理性です。そして、この人の痛み・苦しみ、思い、願いを感じ取れる力が感性です。こうした「知性ー理性ー感性」から生まれる「他者と共に生きるために必要な心や立ち居振る舞い(態度や行為)」が教養です。具体的な力が先述した「8つの教養の力」となります。

知性と理性は違う

教養を理解し、教養を身につけるためには、知性と理性を区別することが重要になります。知性は、①大切なことに気づいたり見極めたりできる力、②物事を能動的に行う力(主体性)、③未知なものに気づく力(発想力)といったものです。理性は、原因を推測したり、目標に向かって合理的に物事を進めたりできる力です。一言でいえば「論理力」です。そして、感性は痛みを感じ、想像できる力です。

知性の力の「大切なこと」とは

「大切なこと」とは大別すると次のようなことです。 ①「いじめないで」「虐待しないで」「死にたい」「寝たきりで回りに迷惑をかけ申し訳ない」「お金がなく苦しい」「介護に疲れた」といった声、地域や学校の中に潜在化している声(呼びかけ)。 ②人間一人ひとりは、唯一無二のかけがえのない存在であること(人間の尊厳)。人間はみな、等しく尊厳(比較を絶した価値)を有していること。 ③愛(人を尊び大切にすること)や正義(平等・公平・抑圧からの解放)。 ④いじめ・虐待・暴力、不正など絶対にしてはいけないと理解し実行できること。 こうした「大切なこと」に気づく、あるいは理解できる知性の力、それが教養の中核にあります。知性を軸にしつつも、理性と感性をバランスよく発揮することにより、教養、すなわち「他者と共に生きるために必要な心や立ち居振る舞い」が可能になります。

社会福祉学部では4年間をかけ、じっくり教養を身につけながら専門的な価値、知識、技術を学んでいきます。

こうした学びを通して、一人ひとりが宿しているその人固有の潜在的可能性を開花させることが学部教育の目的です。